今日の宮工定時制

【定時制】R2球技大会~体育委員のアナザーストーリー~ 

「年度末の球技大会も俺たちで考えてやろうぜ。」

 今年度の体育祭後の反省で、どこからともなく体育委員の口からもれた言葉。

 令和3年3月22日と23日、その言葉が現実となった。


 思い起こせば、1年前の球技大会は、全国一斉休校により、開催直前で断ち消えとなった。

 そのため、1・2年生にとって、球技大会は未経験。経験者は3年生だけである。しかも、3年生が実施したのは2年前。ましてや、運営は教員が中心。

 したがって、「球技大会」という枠組み、過去の遺産はほとんどないに等しかった。

 そのような中で、今年度の体育委員に課された使命は、球技大会の「0→1」を創り上げることなのである。

 まず直面したのは、体育祭同様、新型コロナの影響である。開催ができるのか?仮に開催できたとしても、他の生徒の合意や意欲を引き出すことはできるのか?

 まずはここをクリアするため、4ヶ月前の12月という、大分早い時期からプロジェクトが動き出した。

 他の生徒たちを巻き込むために、体育委員会は2つの方法を打ち出した。


 1つ目は、体育委員が考える球技大会の目的を共有し、共感を抱いてもらう。

 2つ目は、アンケートで実施種目を募り、参加型にすることで意欲を高めてもらう。

 今年度、すでに体育祭を経験した体育委員は、独りよがりでなく、生徒全体の視点と自分たちの視点を重ね合わせていたのである。

 もちろん目的も、運動が好きな人が活躍できる、のような一部の人受けする目的なんて打ち出さない。スポーツは好きな人もいれば、嫌いな人もいる。得意な人も苦手な人もいる。どの層の人も、参加した後には「楽しかったなぁ」で終わってほしいと考えた。

 最終的には、「みんなが楽しめる球技大会」というスローガンを掲げ、他の生徒たちと共有した。

 アンケートの結果、実施種目はバドミントンとドッヂボールとなった。

 判断の基準は ①密回避 ②運動量確保 ③運動能力の差が生じない の3点である。

 ①〜③を軸に、○・△・× をつけ、比較検討し導き出した2種目であった。


 ここからは、実務的な仕事が盛りだくさんである。日程、場所、形式、ルールなど、数えればきりがないほどのタスクが、梅雨の雨のように降ってくるのである。

 教員目線で振り返ると、ここが一番の難関だったと感じる。

 球技大会の経験者が少ないのはもとより、1つの会場で全生徒が連動して動くイメージが持てないことがその理由である。具体的に言えば、授業や部活動の試合では2,3人の動きでほとんどが事足りてしまうということだ。つまり、自分がいる1つのコートで試合ができれば、それで活動が済んでしまうのである。

 故に、60名という大人数が同時に動くシステムに不慣れな点は、大会全体を構想する上では大変なハンデとなった。

 それでも体育委員の5名は、委員長を中心に、過去の球技大会の資料を参考に、仕事を分担し新たな球技大会を組み立てていった。

 3年生は、全体の運営システム。2年生は、バドミントンのルール。1年生はドッヂボールのルール。それぞれが持ち寄り、協議をしながらモレや意味が通らない部分がないかを詰めていった。

 昨今のDXの波に少しでも乗れるように、Chromebookでメンバー表の作成もした。使い慣れていない端末のため、使いづらそうだった(文句とため息で部屋が包まれた)が、何とか完成させた。

 しかし、自分たちで0から作成した資料を使い、LHRでルール説明やメンバー・審判を決める体育委員の背中は、どこか誇らしげで、いくらか広くなっていたように思う。

 他の生徒たちも、この段階から非常に協力的で、「体育委員が前で進めてくれるなら手伝うよ」という雰囲気が教室に充満していた。

 だがしかし、その後に委員会を開くと、体育委員の面々は少しうつむいていた。全体への説明が上手にできなかったと言うのだ。

 理由を聞くと、「自分の理解不足」と返ってきた。これは本当だろうか?自分たちで決めたルール、書き出して確認もした、カンペも持っていた。もう少し、深堀りをしてみると「言葉だけで説明したから」という原因が見つかった。

 普段の委員会ではホワイトボードを使い、会議の流れや決定事項を、文字や図という目に見える形で残している。しかし、自分たちはそうではなく、言ったそばから消えてしまう言葉だけに頼ってしまったと気づいたのである。

 それからというものの、ルールやメンバー表、対戦表などは、全員が同じものを同じように見ることができるように、印刷して配布したり、拡大したものを壁へ張り出し始めたのである。

 ここは、一つ大きな成長ポイントだった。

 

 やっと練習に入る。ここでの体育委員の役割は、ルールやシステムの不備を見つけることだ。

 大きく2つの不備があった。1つ目は、出場の枠が多すぎて体力的にも、実質人数的にも厳しいこと。2つ目は、ルールが机上の空論で実践に即していなかったことだ。

 詳細は省くが、すぐ修正をかけることができた。このフットワークの良さは流石である。試合数を削減し、ルールの改定を行い、速やかに体育委員から全生徒への周知を行った。

 大会直前、なんと開会式や閉会式などの進行や役割を決めていないことが発覚した。持ち前のポジティブ思考で、体育委員を開催。そして、お決まりの役割を割り当てた。


 選手宣誓は委員長、ルール説明と準備運動は2年生、結果発表はリベンジに燃える1年生のAくん。

 体育委員の役割はすんなり決まった。体育祭の成功イメージが残っており自信もある。しかし、校長先生のあいさつや副校長先生の講評、養護教諭の救護の欄だけはすんなりと行かなかった。

 すぐに依頼をしにいかなくてはということで、委員長と副委員長、1年生のAくんとサポートの1−2の生徒2名が走った。

 委員長と副委員長は、直々に校長室へ行き、依頼成功。校長室のソファがフカフカすぎて、天にも昇る思いになったとか。


 Aくんは緊張のあまり、ノックができず部屋の前で20分間立ち往生。サポートの二人に励まされ、ようやっとノックをし、声をかけたと思ったら、流暢に事の次第を説明して依頼を取り付けてしまった。

 終了後、Aくんのドヤ顔とマッスルポーズが炸裂したのは言うまでもない。


 本番当日。

 開会式は、副委員長が司会で回し、ルール説明と準備運動を2年生が固め、選手宣誓で委員長が締める。盤石だった。

 競技中は、全員がプレーヤーと本部の兼任だった。試合終了と同時に、本部で放送をかけ、勝敗の記録を書き込んでいく。体力というより、頭の切り替えが大変だったと思う。それでも、クラスの仲間の手を借りながら、自分たちで運営をやりきった。

 初日のバドミントンを終え、体育委員の一同は安堵の表情で反省会を行った。

 怪我なく終えられたこと、生徒が笑顔で汗をかいていたこと、自信を持って運営に立てたこと。それぞれが前向きな発言をした上で、気を引き締めて明日のドッヂボールへ向かうこととなった。

 前日の大差がついたバドミントンとは打って変わって、ドッヂボールは途中まで全クラス同率首位という白熱した競った展開だった。
自分の仕事もそっちのけで、体育委員もプレイに集中し、クラスのメンバーを盛り立て、クラスが一丸となった1日だった。

 私個人としては、競技にのめり込み、視野がただ1点に集中するそんな姿も素敵だなと、本部から眺めていた。競技の結果は、ぜひメインストーリーをご覧いただきたい。

 閉会式。

 成績発表のリベンジに燃えるAくんの出番。
「第3位は、2勝6敗で1年1組です。(拍手)」
・・間・・
「第2位は2チームいます。4勝4敗で1年2組と、2年1組。(どよめきと拍手)」
・・間・・
「第1位。第1位も2チームいます。・・第1位は・・5勝3敗で、2年2組と3年次です(今日1番の拍手)」

 体育祭では、発表順番の構成とタメに課題があったと自覚していたYくん。球技大会では、それらを完全に克服した。

 体育科としては、ドヤ顔とマッスルポーズが欲しかったのだが、今回はお預けのようだ。人間、本当に集中すると、ドヤ顔もマッスルポーズもしないということが分かった。

 Aくんのここに懸ける想いは、人知れず相当なものだったに違いない。


 最後に、委員長からまとめの言葉。

「みんなが楽しめる球技大会となりましたか?」
「怪我なく、汗をかいて、笑顔でプレーする姿が見られて満足しています。」
「皆さんが協力してくれたおかげで、こんな素晴らしい球技大会になりました。」
「至らない点もあったと思いますので、ぜひ意見をください。」
「本当にありがとうございました。」

 12月から考えてきた球技大会を実施して、委員長の心の底から出てきたメッセージだと思う。もしかしたら、成績発表以上の拍手の大きさだったかもしれない。

 きっと、他の生徒たちも「体育委員のおかげで、こんなに楽しませてもらえたよ。」と心のなかで叫んでいたに違いない。

 無事に幕を降ろした球技大会。

 最後の反省会を開く。改めて体育委員全員から一言。
「自分的にはやり切れた」

「みんなの楽しそうな姿が励みになった」

「経験できてよかった」

「全員の協力があったからここまでこれた」

「ついてきてくれてありがとう」


 まっさらな状態から始めた球技大会。

 時には早く帰りたい日もあった。メンバーが集まらず、仕事が進まないこともあった。説明がうまくいかず、うつむいた日もあった。ルールや形式に不備もあった。

 しかし、途中で投げ出さず、改善案を示し、真摯に取り組み続けた。その姿勢や発言、行動が多くの生徒を巻き込んだ。

 体育委員たちが築いたこの文化は、決して大袈裟ではなく、大宮工業高校 定時制 の体育的行事が受け継ぐ伝統となるだろう。というより、なるに違いない。

 体育委員の皆さん、生徒だけで運営される球技大会を見せてくれて、本当にありがとう。

文責 保健体育科 森

 

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